ICANの始まり  
<国際ボランティアは最初の一歩から!>

  代表理事 龍田 成人

 NGOだの,国際協力だの,いうと,とっても難しいことの様に,思うかもしれませんが,そんなに大袈裟なこととは考えずに,どんなにことでもいいので,実際にはじめてみませんか?

 小さな一歩を! 会社員でも,主婦でも,学生でも,例えどんな環境の人でも,必ずできることがあるものです.1枚のクリスマスカードが思いがけずストリートチルドレンたちの心の支えになったり,1枚の書損じ葉書やテレカから得られた収益金が少数民族の子供たちの給食に姿を変えたり,自分たちにもできる小さなことが,フィリピンなどの国々でとても役立つことにつながる.そんなこと,意外に多いのです.勇気を出して,まず一歩から,そこから全てが始まります.


クリスマスカードに喜ぶストリートチルドレン達


 ぼくの場合,本格的に国際ボランティアに関わるきっかけは,フィリピンで出会ったある子どもの一言でした.1993年3月,当時,少しだけ国際協力に興味があったぼくは,京都の団体のスタディツアーに参加し,フィリピンのいくつかのスラムやピナツボ火山の被災地を訪問しました.はじめて見る厳しいスラムの暮らしや働かずには暮らしていけない子供たちの現実.あまりの深刻さに途方にくれていました.そんなツアーの終盤,あるスラムで親しくなった子供が帰り際に贈ってくれた「グッバイ,マイフレンド」という言葉.何かとても救われた思いがしました.

 「ごく普通の社会人である自分にも,この人たちのために,何か役立てることがある.」 それが, ICAN(アイキャン)の始まりでした.アイキャンという名前には,「自分たちのできることをして行こう!」という意味がこめられています.

 ICANの活動が6年目に入った1999年現在,最初5人だった会員数は150名を越えました.翻訳を担当する方,キャンペーンのPRを担当する方,事務局の仕事をお手伝い頂く方,現地訪問と交渉を担当される方,金銭面の支援をされる方などなど,さまざまな方が,自分の得意な分野で,大切な時間やお金をシェアし,ボランティアベースで,参加しています.日本で協力者が一人増えるたびにICANの能力や資金が増します。

 現在(1999年10月)の活動内容は,1)貧困家庭の子供たちへの里親支援,2)ストリートチルドレンのための奨学金支援,3)少数民族の小学校での給食提供,4)スカベンジャーのための医薬品援助,5)少数民族の住む農村での開発支援などですが,ここに至るまでに,フィリピンでもいろいろなことがありました.

 ミンダナオでの里親支援のために,現地の有志の方に,支援団体「Love&Life」を設立して貰いました.最初は経理やレポート作成もままならない状態でしたが,英語の得意な方のご協力のお蔭もあって,現地訪問や手紙でのコミュニケーションを通じて,里親支援の運営もしっかりしたものになってきました.昨年からはソーシャルワーカーを雇用したり,保健衛生開発省(DSWD)のNGOライセンスも取得するなど,各家庭の置かれた状態に合わせた指導や親たちへの職業訓練などの支援,マイクロクレジットの試行も行われるようになり,「ただ与えるだけの支援」から「自立のための支援へと変わってきています.

 スモーキーバレーというマニラ首都圏のゴミの最終処分場にある居住区では,ゴミを拾って生活しているスカベンジャーの皆さんと話をするうちに,「ゴミ拾いをする際に足を守る長靴を送る」話がまとまり,日本から200足あまりの靴を送りました.今ではそれが縁で,スモーキーバレーのお母さん方が主体に運営する医薬品援助プログラム(安価な薬を住民の皆さんに半額で提供するプログラム)に協力しています.

 また,子供たちへのクリスマスカードが縁で,ミンダナオの小学校と日本の学校の間で交流が始まったケースもあります.日本からの支援を目的とするのではなく,手紙や絵画の交換といった相互理解を目的に交流が続いています.

 もちろん,成功例ばかりではありません.少数民族の小学校での給食では,Love&Lifeのスタッフと学校の先生との間に諍いが生じ,一時的に給食が中止になり,急遽ボランティアスタッフが,現地を訪れ,仲裁するということもありました.また,大量に古着を送ったところ,税関で引っかかり,受け取り交渉が2年近くもかかり,ご提供頂いた方にご迷惑を掛けています.それでも,失敗の一つ一つを次の教訓にして,ICANに参加している皆さんや現地のスタッフや住民の皆さんと一緒に知恵を出し合い,協力して,よりよい支援,よりよい関係を模索しています.

 毎年3月には,ICANに参加されている方々と一緒に,フィリピンを訪問しています.支援を受けている子供たちや家族と実際に会い,生活の実情を聞いたり,現地でプロジェクトの運営を担当している各団体のスタッフと会い,今後の支援について話し合います.
今年の訪問では,奨学金を受けて小学校に通い続けたオーガスト君やアヴェリンちゃんの卒業式にも出席しました.彼らは,板切れやプラスティックの廃材等で作った3畳ほどのスペースをスラムの中に作り,親子の5〜8人ほどがひしめき合って暮らしています.彼らは,夜,家族のために路上で物売りをしながらも,最後まで希望を捨てずに学校へ通い,今日の卒業式を迎えたのだそうです.苦しいときに日本からのクリスマスカードに励まされたこともあったそうです.子供も親も少しはにかみながらも誇らしく,感動的な卒業式でした.

喜びをかみ締めるアヴェリンちゃん

 ICANのサポートしている対象の家族も,この5年で徐々に増え,奨学金や里親で90家族程度給食や医薬品援助の対象者も含めると300家族以上の皆さんを支援できるようになりました.今後も継続的な支援ができるよう,より多くの人の「自分にできること」を集めていきたいと考えています.

あなたも,はじめの一歩を始めてみませんか?