ネットワークで海外支援活動を体感! ICANの挑戦

ican@jca.apc.org / http://www.jca.apc.org/ican/

0 はじめに

 アジア日本相互交流センター(Intercommunication Center for Asia and Nippon ; ICAN)の発端は、フィリピンのスラム街で子ども達の惨状に触れ、この子供達のために、何か自分のできること(I CAN)をしたいと、友人と一緒に、1994年4月に団体を作ったことによる。とはいえ、活動母体もなく、資金もなく、経験もなく、増して信用もない、文字通りゼロからのスタート。自分たちの活動をよく知ってもらい、活動に参加してもらうか。それが鍵だった。もちろん、十分な資金はなく、広報ではできる限り支出を抑える必要があった。それを可能にしたもの、それがインターネットやパソコン通信などのネットワークだった。この特殊な環境がICANの中にインターネットを活用した団体運営術ともいうべきノウハウを蓄積することとなった。ICANでは、会員の8割以上がメールアドレスを持ち、会員は、現地スタッフや事務局とは、メーリングリスト(ML)等で結ばれており、インターネット発展型NGO(非政府国際協力団体)ともいわれている。

1 広報ツールとしてのネットワーク

 上記にも述べたように、ICANの発足当初の課題は、広報と、それに伴う、会員、協力者、資金等の獲得だった。発足当初の広報は、パソコン通信の会議室への定期的な書込みによるものだった。団体が脆弱であった設立当初は、団体の理念を説明しても実績に乏しいため信用されなかった。そこで、主に個々の事業に関して協力を要請した。この広報の方法は、インターネットが普及した現在では、各種市民活動系のメーリングリストやメールマガジンでの広報に継承されている。

 1995年8月にホームページを立ち上げたことで、広報活動は大きく進展した。ここでは情報公開がポイントだった。特に考慮した点は以下の通り。
 1)支援対象となる人々の窮状を知らせる。
 2)支援事業の背景、目的、予想される成果などをわかりやすく記述する。
 3)実際に一般の方や会員から頂いた協力がどのような成果に結びついたか、事業報告および経理報告を行う。
また、事業毎に、会員に評価してもらい、良いと思う事業に会費を出す事業会費制度を取り入れた。
 これらにより、会員数は徐々に増加した(表1)。現在においても、ICANにおける最大の会員獲得手段は、ホームページなどのインターネットである。

表1 ICANの発展経緯とネットワークの活用

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001
ネットワークの活用 <広報ツール>
 パソコン通信、ホームページ
→ 市民活動系ML 、メールマガジン、NHKボランティアネット
      <情報共有ツール>
        情報共有用MLの立上げ 

 → マニラスタッフ雇用  事務局スタッフ雇用
        事務局開設  ミンダナオ団体のIT化

      <団体運営ツール>
        運営用MLの立上げ
        MLを使ったボランティア(翻訳,広報,訪問)

 → MLでの理事会(NPO法人化)
   事業別掲示版&メルマガ

会員数

15名

30名

70名

100名

130名

160名

190名

220名

当期収入

12万円

48万円

76万円

190万円

220万円

480万円

800万円

1000万円



2 情報共有ツールとしてのネットワーク

 NGO活動の課題の一つは、会員が、事務局や現地スタッフなどと乖離しがちであるという点にある。この隙間を埋めたのが、情報共有用MLである。

 情報共有用MLには、会員の他、誰でも参加することができ、現在会員の8割以上がこのMLに参加している。このMLでは活動や運営に関する情報を受ける他、活動に関する質問や意見を多くの会員の前で述べることができる。また、支援対象の拡大や法人化の是非、総会の議案など重要な要件については、議案として総会に提出される前に、このMLで事前討議されるので、ML参加者は団体運営の重要な案件についてその意志を反映させることができる。MLではほとんど毎日メールが届けられるため、会員は日々団体事務局を意識してくれるようになり、身近な存在と感じてくれるとのことである。

 また、マニラ周辺の事業を日本人専従スタッフが運営するようになると、このMLは、現地を直に感じられる場になった。日々事業地を訪れるスタッフは、刻々と変わっていく現地の様子や住民の人の気持ちをML参加者に伝える。ML参加者は、現地の生の声を直接聞くことで、現地の住民の皆さんが抱える問題を他人ごとではなく、自分の問題として捉えてくれるようになった。現在、ミンダナオの協力団体ともメールのやり取りが可能となり、このMLを通して、全ての事業の情報を得ることができる。

3 団体運営ツールとしてのネットワーク

 ICANでは、広報や情報共有だけでなく、団体運営のためにも、ネットワークを活用している。運営用MLでは、日々の運営について、現地や事務局のスタッフや運営を手伝うボランティアを交えて話し合っている。 2000年にNPO法人になってからは、理事が各地に点在している事情からこのMLで理事会も行われる。このMLは会員に対して公開されており、団体運営の公開にも役立っている。

 さらに、最近では、CGIを活用してメールマガジン(メルマガ)の配信機能を加えたWEB会議室をテーマ別に設けて運営に役立てている。現在、事務局ボランティア、翻訳、スタディツアー、フェアトレード(公正貿易)、児童労働(含、開発教育)などの会議室があり、それぞれのテーマを担当しているスタッフやボランティア間で意見調整やお互いに指示をしている。例えば、翻訳などは、一度も顔を合わせたこともないボランティアが、メールの依頼だけでこなして行く。これらにはメールで投稿できる他、WEB上での書込みも可能である。また、掲載内容は原則公開されており、事業の運用過程がわかりやすいと好評である。

4 まとめ

 インターネットなどのネットワークを、社会に対する広報活動、会員間との情報共有、団体運営に関する意見調整などに活用し、NGO活動を支えてきた。ネットワークは、社会、会員、スタッフ、事業地などの点を有機的に結び付け、メンバーの精神的な距離を縮める。活動に関わる人全体を一体にすることが可能な優れたツールである。


表2 ICANの活動(2001年6月現在)

(1)ミンダナオ島での活動
  1)貧困家庭の子ども達対象にした通学支援
  2)少数民族の通う小学校での給食提供

(2)パヤタスゴミ処分場(マニラ・ケソン市)での活動
  1)周辺住民を対象にした医療支援
  2)スカベンジャー(ゴミを拾って生活する人)を
   対象にした技能訓練支援

(3)ルソン島山岳部での活動
  1)少数民族への教育支援(プレスクール、通学)

(4)日本での活動
  1)開発教育(テーマ 児童労働等)
  2)フェアトレード(パヤタス作業所製作品等) 


この子ども達の笑顔を消さないために